日本にアンフォルメル旋風を巻き起こした洋画家・今井俊満は、作風を大胆に変化させながら生涯を通じて独自の芸術を追求した画家です。2002年の逝去から20年以上が経過した現在も市場での再評価が続いており、卸業者・買取業者にとって今井俊満の価格と相場を正確に把握しておくことは、適切な仕入れ判断や査定精度の向上に直結します。本記事では、時代ごとに大きく変化した作風と連動する形で、価格帯・査定ポイントを詳しく解説します。
今井俊満とはどのような画家か
今井俊満の作品価格を正確に読み解くためには、まずその画業の流れと時代ごとの作風の変遷を把握しておくことが不可欠です。今井俊満は他の作家と異なり、ひとりの画家とは思えないほど作風が変化しており、時代によって評価が大きく異なるからです。
今井俊満(1928〜2002年)は京都市に生まれ、武蔵高校在学中から荻太郎・梅原龍三郎・安井曾太郎らに師事しました。1948年に第12回新制作派協会展で「道」が入賞し画家としてのキャリアをスタート。1950年には東京藝術大学美術学部油絵科で1年間派遣学生として学んだのち、1952年に単身パリへ私費留学します。ソルボンヌ大学文学部在籍中にサム・フランシスの紹介でミシェル・タピエと出会い、アンフォルメル運動に加わりました。
1956年に日本橋・高島屋で開催された「世界・今日の美術展」では、岡本太郎の依頼を受けてアンフォルメル作家の作品を斡旋し、日本で初めて本格的にアンフォルメルを紹介した立役者となっています。その後は日仏間を往来しながら活動を続け、1970年の大阪万国博覧会では企業パビリオンの美術監督も務めました。1992年に急性骨髄性白血病を発症後も制作を続け、2000年に余命数ヶ月と告知されたのちに「サヨナラ展」を開催。2002年3月に73歳で逝去しています。
受賞歴と国際的な評価
今井俊満は国内外で幅広い受賞歴を持ちます。1962年に現代日本美術展優秀賞を受賞し、1979年には紺綬褒章を受章しています。フランスからの評価も高く、1983年にフランス芸術文化勲章オフィシエ、1995年にレジオン・ド・ヌール勲章シュバリエ、1997年にフランス芸術文化勲章コマンドール、1998年に文部大臣表彰と、晩年にかけて名誉が重なりました。2018年にはバラエティー番組「開運!なんでも鑑定団」で今井俊満の作品が依頼主の自己評価額の10倍にあたる2,000万円の鑑定結果を記録し、一般層への知名度向上にも貢献しています。
3つの時代と作風の変遷

出典元:https://www.momat.go.jp/artists/aim001(東京国立近代美術館)
今井俊満の画業は大きく3つの時代に分けて理解されています。第一期がアンフォルメル全盛期(1950〜70年代)、第二期が「花鳥風月」シリーズの時代(1980〜90年代)、第三期が晩年のコギャル・人物シリーズ(2000年前後)です。この区分は価格評価にも直結するため、業者として作品を取り扱う際の基本的な軸となります。
今井俊満の作品価格と相場
今井俊満の作品は時代・技法・サイズによって数千円から500万円以上まで幅広い価格帯に分布しています。ここでは時代別に価格の目安を整理します。
全体の参考値として、ヤフオクの落札データでは最安500円・最高381,000円・平均約37,500円前後という実績があります。ただしこの数値には画集や版画、関連書籍も含まれており、肉筆の油彩作品に限定すると相場は大幅に上昇します。獏の公開情報では油彩作品の買取相場を数千円〜500万円と幅広く設定しており、時代と内容による差がいかに大きいかを示しています。
アンフォルメル全盛期(1950〜70年代)の価格帯
今井俊満の作品の中で最も高く評価されるのが、1960〜70年代のアンフォルメル全盛期に制作された抽象油彩画です。混沌とした図柄に黒いラインが縦横無尽に走る作品や、赤を基調とした激烈な抽象画がこの時期を代表します。当時はアンフォルメルのトレンドを反映して100号以上の大型作品も多く、サイズと図柄の充実度が価格を左右します。暗く引き込まれるような混沌とした構成の作品が最も高価買取されやすく、代表作クラスでは数百万円の評価がつく事例もあります。
ただし制作から半世紀以上が経過しているため、キャンバスの割れ(クラック)や絵具の剥落といったダメージが出ている作品が多いことにも注意が必要です。コンディションが価格に直結するため、受け取り時には表面・裏面を含む丁寧な状態確認が欠かせません。
花鳥風月シリーズ(1980〜90年代)の価格帯

出典元:https://www.momat.go.jp/artists/aim001(東京国立近代美術館)
1983年頃から制作が始まった「花鳥風月」シリーズは、琳派の装飾性と金銀の華やかさを取り入れた具象作品群で、アンフォルメル期とは180度異なる作風が特徴です。桜・梅・紅葉・芒・椿などの植物モチーフを大胆な構図で描いており、「紅葉図」「四季図」「桜図」「満月と芒」などが業者間でも知名度の高い作品名として挙げられます。1985年には「花鳥風月」として作品集にまとめられ広く知られるようになりました。
アンフォルメル全盛期と比べると価格帯は落ち着きますが、それでも人気の高いモチーフや金銀を豊かに使用した大型作品は数十万円規模の取引となるケースがあります。シルクスクリーンによる版画作品も多く市場に出回っており、こちらは数万円台が中心の価格帯です。
晩年のコギャル・人物シリーズの価格帯
2000年前後に制作されたコギャルや人物をモチーフにした作品は、キャンバスではなく紙にエナメルで描かれているものが多く、今井俊満の3つの時代の中で最も評価が低い傾向にあります。買取査定額は数万円台が目安となります。ただし「21世紀は女性の時代」と語り晩年に独自の表現を追求した姿勢そのものには評価があり、研究目的のコレクターによる需要も存在します。
価格を左右する主な要因
今井俊満の作品価格を決める要素は複数あります。取引現場での的確な判断のために、以下のポイントを理解しておくことが重要です。
制作時代が最も影響力の大きい要素です。前述のとおりアンフォルメル全盛期・花鳥風月期・晩年期の順で評価が高くなる傾向があり、手元にある作品がどの時代のものかを最初に見極めることが査定の基本となります。
サイズと図柄の充実度
アンフォルメル全盛期の作品ではサイズが大きいものが多く、100号超の大型作品が市場に出ることもあります。サイズは価格に比例しやすいですが、図柄の密度や迫力がより重要で、暗く混沌とした構成の作品ほど高評価がつきやすい傾向があります。花鳥風月シリーズでは金銀の使用量と構図の華やかさが評価ポイントとなります。
鑑定機関の不在と真贋確認の方法

今井俊満には現在、所定の鑑定機関が存在しないという点は業者として把握しておくべき重要な情報です。そのため真贋判定は実物を専門業者に見せて確認する方法が基本となります。来歴(プロベナンス)が明確な作品や、購入時の書類・画廊の証明書が付属している作品は取引における信頼性が高まります。
コンディションの確認
アンフォルメル全盛期の作品はとりわけ経年によるダメージが出やすいため、キャンバスの割れ・絵具の剥落・カビ・シミの有無を丁寧に確認することが必要です。花鳥風月シリーズでは金箔・銀箔の状態も確認のポイントになります。額装の状態も含めて総合的なコンディション評価を行うことが適正な価格判断につながります。
市場動向と今後の価格見通し
今井俊満の作品市場は、近年の戦後日本美術への再評価の流れの中で注目度が高まっています。2023年には苫小牧市美術博物館で今井俊満の作品を含む企画展が開催されるなど、美術館レベルでの展示機会も継続しています。
国内外の美術オークションでは、戦後の日本アンフォルメルへの関心が高まっており、1960〜70年代の抽象作品については今後も安定した需要が見込まれます。花鳥風月シリーズについても琳派的な装飾性への評価は根強く、インテリアアートとしての需要も一定数あります。特に「開運!なんでも鑑定団」での2,000万円評価(2018年)は市場関係者の記憶に残っており、一般コレクターを含む潜在的な買い手層の広がりにつながっています。
鑑定機関が存在しないため真贋確認に専門知識が必要という参入障壁はあるものの、裏を返せば適切な知識と鑑定ネットワークを持つ業者にとってはビジネスチャンスにもなり得るカテゴリです。
まとめ|美術業者限定の作品仲介ならDealers Stock
今井俊満の作品価格は、アンフォルメル全盛期の油彩が最も高く評価され数百万円規模の取引事例もある一方、晩年のコギャルシリーズは数万円台と、時代によって大きな差があります。「花鳥風月」シリーズの「紅葉図」「四季図」「桜図」「満月と芒」といった代表的な作品名を把握したうえで、制作時代・サイズ・コンディションを複合的に評価することが適正価格での取引の基本です。所定鑑定機関が存在しないため、信頼できる専門業者への確認を前提とした慎重な取引判断が求められます。
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