小林和作(こばやし わさく、1888〜1974年)は、山口県出身の洋画家です。日本画から洋画へと転向した異色の経歴を持ち、梅原龍三郎・中川一政・林武らと交流しながら独自の画風を確立。豊麗な色彩と力強い筆致による風景画で知られ、広島県尾道を拠点に戦後の独立展で活躍し続けました。1953年には芸術選奨文部大臣賞を受賞し、1971年には勲三等旭日中綬章を受けています。作品の買取相場は数万円台から10万円台が中心で、昔の金額を知る人からは厳しく感じられる水準が続いていますが、独立美術協会を代表する作家として一定の安定需要を保っています。本記事では、業者として知っておくべき価格の実態と査定のポイントを整理します。
小林和作はどのような画家か
作品を適切に評価するためには、小林和作が歩んだ数奇な画業と、各時期の作風の変遷を理解しておくことが重要です。
1888年(明治21年)8月14日、山口県吉敷郡秋穂町(現・山口市)の裕福な地主の家に生まれました。7人兄弟の長男として育ち、画家を志して父に廃嫡を申し出るも許されず、紆余曲折を経て1904年(明治37年)に京都市立美術工芸学校日本画科に入学。同級には高畠華宵、1学年上に村上華岳がいました。幸野楳嶺門下の川北霞峰の画塾に入り「霞村」の号を授かり、1908年(明治41年)に同校を卒業後、京都市立絵画専門学校に入学して竹内栖鳳の指導を受けました。
1913年(大正2年)に絵画専門学校を卒業し、1920年(大正9年)に洋画研究を志して鹿子木孟郎の画塾に入門し、初歩の木炭画から洋画を学び始めます。ここで林重義・北脇昇らと知り合い、1922年(大正11年)に上京。梅原龍三郎と中川一政の作品に感動して洋画への転向を決意し、梅原・中川・林武の3名から直接油彩の指導を受けるという恵まれた環境を得ました。
この頃の小林和作には莫大な財産がありました。裕福な地主の嫡男として1921年(大正10年)に家督遺産(約500万円・現在の数十億円相当とされる)を相続しており、当時まだ無名であった林武・中川一政らを経済的に援助しながら師事するという豪快な画家人生を送っていました。しかし1931年(昭和6年)頃、財産管理を任せていた弟が株式投資に失敗して全財産を失い、富豪画家時代は終わりを告げます。
尾道への転居と独立美術協会

出典元:https://vessel-group.co.jp/shibuya-museum/about/wasaku/(しぶや美術館)
1925年(大正14年)の春陽会展で春陽会賞を受賞し、1927年(昭和2年)に春陽会会員となりました。1934年(昭和9年)に春陽会を退会して独立美術協会会員となり、同年に東京から広島県尾道市に転居。尾道への移住はその後の画業の基盤となり、瀬戸内の海・山陽地方の山岳・季節の風景を豊麗な色彩で描く作風を確立しました。
戦時中の1945年(昭和20年)には、戦争画を描かない画家への画材配給がほぼ途絶えたため、「燦樹」と号して日本画を主に描いていた時期があります。戦後に洋画制作を再開し、独立展を中心に日本国際美術展・現代日本美術展などで幅広く活躍。1951年(昭和26年)に「ゆく春」が文部省に買い上げられ、山陽新聞社賞を受賞。1952年(昭和27年)に中国文化賞、1953年(昭和28年)に27年度芸術選奨文部大臣賞を受賞しました。
尾道を拠点とした約40年の間、広島県美展の創設や広島県立美術館の開館にも尽力し、多くの若い画家を育てました。1964年(昭和39年)に秋穂町名誉町民、1971年(昭和46年)に勲三等旭日中綬章を受けました。1974年(昭和49年)11月3日にスケッチ旅行中に転落事故に遭い、翌4日に頭蓋内出血のため逝去。享年86歳でした。命日の11月4日には尾道の西國寺で「和作忌」が今も営まれています。
鑑定について
小林和作の所定鑑定機関は東美鑑定評価機構鑑定委員会です。油絵などの原画作品はこの機関で鑑定書が取得できますが、すべての作品に必要なわけではないため、現物を確認した上で鑑定に出すかどうか判断するのが実務上の基本スタンスです。買取時に鑑定書がなくても査定は可能です。
小林和作の作品価格と相場の目安
小林和作の作品の買取相場は、作品の形態や題材によって幅があります。
買取相場の全体感

出典元:https://vessel-group.co.jp/shibuya-museum/about/wasaku/(しぶや美術館)
買取価格は数万円台から10万円以上の作品まで様々です。ただし、現在の市場動向を考慮すると10万円以上といっても50万円・100万円という金額は現実的ではなく、昔の金額を知っている人からすると非常に厳しい評価水準になっているとされています。
オークション落札実績
Yahoo!オークションでの「小林和作」(美術品カテゴリ)の落札実績は最安960円・最高165,110円・平均36,633円という分布を示しています。全カテゴリを合算すると最安1円・最高181,500円・平均27,106円です。
個別の落札事例としてはオークファンに以下の記録があります。「男鹿半島」(油彩・約12号・日動画廊取扱)が112件の入札を集めて74,000円、「秋の渓谷 大和吉野川上流」(油彩・4号)が45件の入札で44,000円、「SM・森の風景」(油彩・サムホール)が41件の入札で31,000円での落札が確認されています。オークファンの同集計での平均落札価格は21,733円(35件)でした。
これらのデータから、油彩原画の本格的な作品は2〜7万円前後が流通の中心であり、状態や題材が揃った大判の作品は10万円台に達することも珍しくない水準と読み取れます。
買取査定で差がつく4つのポイント
小林和作は物故作家であり、東美鑑定評価機構が鑑定機関として存在しています。買取現場では以下の確認事項が査定精度に直結します。
題材:山岳・海・山陽地方の風景が中心評価

出典元:https://vessel-group.co.jp/shibuya-museum/about/wasaku/(しぶや美術館)
市場での取扱実績を見ると、「秋山」「志賀高原」「磐梯山」「乗鞍岳ヨリ穂高岳方面」「木曽御嶽の秋」「日本海」「石廊崎」「紀州風景」など、山岳と海の風景が取扱いの主軸となっています。東海・日本海・瀬戸内などの海景、アルプス・吉野・山陽の山岳風景が買取市場での主要評価対象です。豊麗な色彩と力強い筆致が存分に発揮された作品ほど評価が高まります。花の作品も一定の需要があります。
油彩原画か否かの確認
小林和作の作品形態は油彩(キャンバス・板)・日本画(戦時中の燦樹名義)・版画(リトグラフ・木版画)などがあります。評価の中心はキャンバスまたは板に描かれた油彩原画です。日本画は戦時中に一時的に描いた特殊な経緯があり、油彩作品とは評価軸が異なります。リトグラフなどの版画は油彩原画と比較して大幅に評価が下がります。
サインと証明シール
小林和作のサインについては、1943年(昭和18年)頃を境にローマ字表記から漢字表記に変更しています。ローマ字署名の作品は1943年以前の作、漢字署名の作品は1943年以降の作と時代の目安になります。また、日動画廊などの信頼のおける画廊の証明シール・取扱シールが付属している場合は、真作の裏付けとして査定の加点要素となります。オークション落札事例でも「証明シール」や「日動画廊取扱」が高入札数を集めていることから、来歴の明確さが市場評価に影響していることがわかります。
保存状態
油彩画のキャンバスのたわみ・亀裂・絵具の剥落、画面の汚れ・変色・加筆修復の有無が査定の基本確認事項です。小林和作の油彩は厚塗りが多い作品もあり、時間の経過によって絵具にひび割れが生じているケースがあります。額のキズや変形も付属品の状態として確認が必要です。
市場動向と今後の見通し
小林和作の買取相場は、昔の金額を知っている人には非常に厳しい水準にあります。若手洋画家の台頭と現代美術への需要シフトという物故洋画家全般に共通する市場環境の中で、現在は数万円台が中心という相場水準が続いています。
一方で、Yahoo!オークションで「小林和作」の出品件数が369件(直近30日の落札24件)あることは、一定の市場流動性があることを示しています。東京国立近代美術館・ひろしま美術館・岡山県立美術館など公立美術館に作品が収蔵されており、2023年にはしぶや美術館で「小林和作展」が開催されるなど、芸術史的評価は継続しています。
尾道を中心とした山陽地方では地元の著名画家としての知名度が高く、地域コレクターによる需要が価格の底を支えています。状態良好で来歴の明確な油彩原画は、適切な購買層に届けることで相応の評価が期待できます。
まとめ|小林和作作品の相場を押さえた査定を
小林和作は芸術選奨文部大臣賞受賞の洋画家であり、油彩原画の買取相場は数万円台から10万円台が中心です。Yahoo!オークションの美術品カテゴリでは最高165,110円・平均36,633円という実勢を示しており、山岳・海の風景を厚塗りで力強く描いた油彩原画が最も評価されます。所定鑑定機関は東美鑑定評価機構ですが、すべての作品に鑑定書が必要なわけではなく、現物確認と来歴情報の整理が実務の基本となります。
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